不妊治療をご希望の方へ

 治療室では言いにくいことを書いていきます。

 最近、社会全般に晩婚化が進んできたこともあり、不妊症に悩むカップルが増えてきました。20年ほど前に聞いた講演では6組にひと組が不妊という話を聞きました。現在ではもっと深刻な状況のようです。

 そして最近は人工授精、体外受精がかなり一般的になってきました。

人工授精の確率は平均で10%以下、40代では4%程度です。

体外受精ではその確率は人工授精の約30%程度アップするそうですがたかがしれていますね。

 日本の平均治療期間は2年、費用は平均で140万円、顕微受精で170万円程度。(保険適用で、今はもっと安くなりました)←データが古くてすみません。

回数を重ねるごとに、年齢が上がるごとに確率は低下していきます。

ちなみに15年ほど前ですが、患者さんで700万円近く使ったという猛者もいました。

 実際に診療してみると、不妊症を訴える患者さんのほとんどが、妊娠できなくて当たり前の状態で来院します。

 たまたま妊娠してない人達、特に30代前半くらいまでで、栄養状態のよい方達は、夫婦生活の回数を増やすだけでうまく行きますから問題ありませんが、本人たちは本質的な問題点に気がついてないのでちょっとしたアドバイスが必要でしょう。

 まず、人間は生物の中で最も妊娠しにくい動物であることを自覚してください。

なので、猫や犬のような発情期がありません。

下品な言い方をすれば毎日が発情期でなければなりません。

それこそ極端な話、妊娠できないカップルは毎日でも営みか必要です。

少なくとも排卵日前の数回だけの営みでは無理です。

 特に高齢出産の域(概ね35才以上)に入っている、あるいは近い人たちはほとんど不可能に近いです。

ましてや日本人夫婦の営みの回数はフランス人やイタリア人の1/3ほどしかないそうです。(20~60代)

世界的平均回数が約100回/年、調査国中最下位の日本は48回、平均ですよ。

週一でこの数字です。

 これより少なければ、奥さんの子宮はガチガチの硬い筋肉の塊に。ご主人の精子は目的も無くなんとなく分泌されているだけの廃液に近づいてます。卵子だって同じことが言えます。

 人間の機能は使わなければ退化しますから、精子も強制排出しなければ尿などと一緒に自然吸収、排泄されるのを待つだけになり、自ら泳ぎだす必要もなく活動量は低下します。

 子宮もなんの刺激もなければ、収縮も拡張もしませんからただの硬いスジ肉の塊になってしまいます。他の条件と合わせてひどくなれば子宮筋腫ですね。

 ヨレヨレした精子とゴツゴツした子宮では着床しにくいのは容易に想像できます。活きのいい活発な精子とふかふかの羽毛布団のような柔らかい子宮(内膜)が理想です。

 また、着床以前に、普段子宮内は細菌などの異物の侵入予防のため強い酸で守られていることはご存知だと思います。

営みの時に分泌される膣分泌液(バルトリン腺液、スキーン液)という中和剤が十分に分泌されないと、それでなくても元気のない精子は卵管までたどり着く前に強い酸にやられて死んでしまいます。

分泌が少ないと感じる場合、それだけで妊娠確率が低いと診るべきです。

 改善が難しい時は馬油が夫婦和合の妙薬と昔から言われていますので、活用してみる価値はあると思います。

男性は普段から新鮮で活きのいい精子を製造し送り込む行為を繰り返し、女性は精子を異物ではなく大切な要人として受け入れるという行為を継続することにより、たまたまお互いのコンディションがピッタリあった時に着床、妊娠へとつながります。

  

 ところが、結婚から時間が経っている夫婦や高学歴、頭脳、精神労働者(頭や神経を使いすぎて上半身にエネルギーが偏り、下半身が冷えている状態になる)にとってはここをクリアするのが難関です。

中にはこういった話をすると、すぐにじゃあ人工授精でいいです。という方もかなりいます。

しかしちょっと待って下さい。

弱った精子と卵子を無理やりくっつけたとしても、その結果生まれてきた子がいろんな意味で健康に育つ可能性は自然競争を生き残ってきた子に較べるとどうなのかなという疑問が残ります。

必ずしもこのせいだとは言えませんが、現に発達障害を含む障害児が急激に増加しているのも事実です。

少しでも、こういったリスクを減らす努力をしてください。

 中には、どうしても人工授精、体外受精をしなければ無理という方もいます。

そういう方は、卵や精子を抽出する時の両親の体調を出来るだけ完璧な状態に仕上げておいてください。

 

 良い体調の時の親から受け継いだ遺伝子は良い状態の体質を、悪い体調の時の子は悪い体質を受け継いでしまいます。

 例えばアレルギーが出ている時に受け継いだ遺伝子はアレルギーがスイッチオンの状態で生まれてきます。

たとえ、親にアレルギーがあっても、少しでも改善された状態(スイッチオフ)で受け継がれるようにすると、案外アレルギーが遺伝しないことも多いようです。

 ちなみに、両親のどちらかがアトピー体質の人は多少妊娠しにくい傾向があります。

次に原因。

不妊症なのは必ず理由があります。

不妊患者の90%以上にみられるのが冷え性です。

最近では西洋医学の世界でも言われ始めましたが、残念ながら彼らは患者に触りませんから個人個人の体質を診ることができません。

そこで東洋医学が注目されています。

その得意分野である脉診、腹診、舌診などです。

これらの診断で個々の体質を見極めます。

 脉診のできる方はすぐに理解されると思いますが、濡脉、弱脉の人がほとんどです。細脉の場合は可能性があります。実を拍っている人は、ほおっておいてもやることをやれば妊娠します。微脉の人はほぼ妊娠する確率は0に近いです。

これらは、冷えと身体の栄養状態を示しています。

そしてそのとらえ方。

冷えには自覚的なものと無自覚的なものがあります。

自覚的なものは自分でわかりますから問題ありませんね。

無自覚的なものが問題です。

 不妊症で来院する患者の脉を診ると、とても妊娠できそうにない身体の人がほとんどです。患者の90%以上が冷え性です。

中には私は冷え性じゃないと言い張る人もいますが、暑がりの冷え性だっているんです。このタイプがかなり増えています。

自覚がないので説得が難しく生活改善の指導も難しいです。

次に食事。

 肉や乳製品を過剰に摂取し、冷たい物をガブガブ飲みます。甘い物もバンバン食べるので身体は緩みきっています。

加えて、何しろ暑がりですから温めるのを嫌がります。冷たい物を欲しがります。冷房も好きだったりします。これは生活環境上、避けられないこともあるのでなんとも言えませんが、かなり良くない因子の一つです。

 また、不妊治療をする方は高学歴、高キャリア、高収入の方達が多いですね。

こういうタイプは、勉強や仕事での成功体験を数多く経験しています。つまりどんな困難でも、理論通り、効率よく合理的に努力すれば誰でも成功するに違いないと信じて疑っていません。

この考えは上昇志向の前向きな生き方としてはとても素晴らしいことです。

 

 しかし、寄り道、道草だらけのの妊娠、出産、子育てには必ずしも良い結果をもたらすとは限りません。

雑誌に載ってるとおりにいかなかったり、なにか他の子より遅れていたりするとストレスで自己コントロールできなくなったりしがちです。

 子供ができないとパートナーのせいにしたり、できても成長が普通じゃないと育児を放棄したり、ストレスで産後うつ、育児ノイローゼに陥ったりしやすくなります。

 自然妊娠を望む場合には当然ですが、人工授精、体外受精を考えている人にもできること、やった方がよいことはいくつかあります。

 冷え症を解消しましょう。

これでほとんどの人は何とかなってきます。ならない人は、無精子症、生殖器の器質的疾患、発育不全、冷えがあまりにも強すぎる、先天的後天的なホルモン異常あるいは極度のストレスによるホルモン異常などでしょう。

上記で挙げたように、どんなに努力しても妊娠できない人というのも少なからずいらっしゃいます。

もし、運悪くそういう診断を受けてしまったなら、考えを切り替えて「もらいっ子」というのはどうでしょう?

幸せに暮らしているご家族、いらっしゃいます。ただし、いろいろな問題があるのも事実です。じっくり考えてみてください。

冷え症の解消について

子宮や精巣は下半身にあります。ですから、下半身を温め、そこに新鮮な血液、栄養が行き渡るようにしましょう。

半身浴。上半身の熱を下半身に下げて上げましょう。

冷飲冷食の制限。

過度の飲酒(覚醒時に急激に冷え、また下半身が冷えて頭に熱が昇る二日酔いがおこる)を極力避ける。

適度の運動により下半身の血流改善。(アスリート的な強度の運動は、冷え症を増悪させるので注意が必要)

身体を温める食事。(あれこれ言われているので自分で調べてください)

継続的な服薬を極力減らす。(できる限り薬以外の解決法を捜す)

鎮痛剤、睡眠薬、安定剤、向精神薬の服用を極力止める。(これらの薬剤は冷え症の元凶の一つです)

ホルモン剤(ピルを含む)の服用を極力避ける。(卵胞が育ちにくくなる)

年齢が高くなるほど夫婦生活はまめに。

まずこの辺から始めてみてはいかがでしょうか。

それから大事なこと。

私が子供が欲しいのではなく、愛し合う2人の子供が欲しいのです。子供は2人が愛し合った結果です。焦る気持ちはわかりますが、夫婦どちらかが先走った行動に走ると、夫婦間に亀裂が生じることもあります。運悪く子宝に恵まれなくても、その時はその時、2人で楽しい人生をという覚悟も必要です。

最後にちまたでは鍼や灸治療は不妊治療としてはかなり効果の高い治療法であると言われています。体質を改善し、冷え症を改善、妊娠しやすい身体を作るのが私たちの役目です。必ず妊娠させるというものではありませんのでご注意ください。

それでは幸運を祈ります。